蛇紋石化
化学過程 (変質) - 地表 (海水)
別名
蛇紋岩
生成に必要な地質環境
産状
かんらん岩の加水変質により生成した蛇紋岩に含まれる造岩鉱物。 かんらん岩の岩体が地下もしくは地表付近で、天水や海水と反応して生成すると考えられ、 かんらん岩が天水や海水と接触しやすい沈み込み帯や中央海嶺付近で見られる。 また、高圧型変成岩などの異質岩片を取り込んだメランジュのマトリクスとしても構造線沿いに見られる。 ハルツバージャイトから変質した蛇紋岩では、頑火輝石斑晶の変質物であるバスタイトが観察できるため、源岩であるハルツバージャイトが特定できる場合がある。 かんらん岩中の苦土かんらん石は、Ni, Cr, Feが固溶できるが、 変質物である蛇紋石にはそれらは固溶しないので、蛇紋岩中にNi, CrやFeを含む硫化鉱物が生成する場合がある。 かんらん岩の主要成分であるかんらん石、斜方輝石(頑火輝石)および単斜輝石(透輝石)からの蛇紋岩の生成は、 以下の反応で起きると考えられる。
2Mg2SiO4 (かんらん石) + 3H2O (水) = Mg3Si2O5(OH)4 (蛇紋石) + Mg(OH)2 (ブルース石)
Mg2SiO4 (かんらん石) + MgSiO3 (頑火輝石) + 2H2O (水) = Mg3Si2O5(OH)4 (蛇紋石)
また、かんらん石に含まれるFeから磁鉄鉱が生成する。
3(Mg0.9,Fe0.1)2SiO (かんらん石) + 4.1H2O (水) = 1.5Mg3Si2O5(OH)4 (蛇紋石) + 0.9Mg(OH)2 (ブルース石) + 0.2Fe3O4 (磁鉄鉱) + 0.4H+
この反応により、還元的な高アルカリ性の流体が発生する。この流体により、かんらん岩中の 単斜輝石(透輝石)が蛇紋岩化する。
4Mg2SiO4 (かんらん石) + CaMgSi2O6 (透輝石) + 5H2O (水) + 2H+ = 3Mg3Si2O5(OH)4 (蛇紋石) + Ca2+
かんらん岩に含まれるCaは、生成物である蛇紋岩を構成する鉱物に固溶しないので、流体中に放出される。 結果として蛇紋石化の結果放出される流体は、還元的、高アルカリ性で、Caに富む。 この流体によってロジン岩や還元的変質を受けた蛇紋岩が生成される。 蛇紋岩にしばしば伴う方解石などの炭酸塩鉱物は、このCaに富む流体が海水と混合することで沈殿する。
このサイトに記載のある蛇紋岩とかんらん岩の分布。 赤点は、かんらん岩。緑点は蛇紋岩。 黄色は、高圧型変成岩と蛇紋岩メランジュの分布。
鉱物組み合わせ
[ 蛇紋石化の程度 ]
[ 低 ] アンチゴライト, クリソタイル, リザード石, 磁硫鉄鉱, ペントランド鉱, 磁鉄鉱, (黄銅鉱)
[ 中 ] アンチゴライト, クリソタイル, リザード石, ペントランド鉱, ヒーズルウッド鉱, ゴドレフスキー鉱, 磁鉄鉱, クロム鉄鉱, (黄銅鉱)
[ 高 ] アンチゴライト, クリソタイル, リザード石, ペントランド鉱, ビオラル鉱, ポリジム鉱, 針ニッケル鉱, クロム鉄鉱, (黄銅鉱, 磁鉄鉱)